歯周病は初期の段階では自覚症状がないため、かかっていることすら気づかない人が多いのが特徴です。
日本人の約8割が歯周病だと言われている現代。あなたは大丈夫でしょうか?
ここではセルフチェックと今日から誰でもできる予防法を紹介しますので、参考にしてください。
目次
歯周病とは
歯周病とは、歯を支える歯肉や歯槽骨などの歯周組織が、プラーク(歯垢)に含まれている歯周病原菌によって壊されていく病気です。
歯肉とは歯ぐきのこと、歯槽骨は歯肉に覆われているそれぞれの歯が収まる骨のことを指します。
プラークは歯と歯のすき間や、歯と歯肉のすき間(歯周ポケット)に溜まりやすく、放置することで歯周病菌の活動を活発化させます。
セルフチェック10項目
まずはセルフチェックを行い、歯周病の疑いがないか確認しましょう。
項目ごとにその症状の原因についても説明します。
①歯を磨くと血が出る
歯周病であれば、歯肉が炎症を起こしているため刺激を与えると血が出やすい状態になっています。何もしなくても血が出るときがある人は要注意です。
➁歯と歯の間に食べ物がよく詰まる
歯肉が痩せて歯と歯の間にすき間ができています。
歯肉が痩せることを歯肉退縮と言いますが、若い年齢でこの特徴がある人はチェックです。
③歯肉の色が赤黒い
健康な歯肉は淡いピンク色をしています。
色が変わっているのは炎症が起こっている(起こり始めている)サインです。
④口臭がキツい気がする
白血球の死骸である膿が歯肉に溜まることで臭いが出ます。
歯槽膿漏の初期段階である可能性が高いため、自分で感じた上に他人から言われる場合は疑うべきです。
⑤触るとグラつく歯がある
歯を支える土台である歯槽骨が菌に侵されている可能性があります。
早急に歯科医院へ受診するべき症状です。
⑥冷たいものや熱いものがしみる
歯肉が下がることで歯の根元の象牙質と呼ばれる部分が露出します。
通常、歯の表面を覆うエナメル質という組織に守られている象牙質は特に菌や刺激に弱いため、しみなどの知覚過敏が起こります。
⑦食事中に歯が痛む
歯周組織全体が弱っていると負荷がかかることで痛みが生じる場合があります。
刺激物を飲食していないのにもかかわらず日常の食事で痛むことがあれば、異常を疑いましょう。
⑧唾液がネバついている
歯周病菌をはじめとした細菌が原因で唾液が粘液性唾液に変化しています。
ストレスを感じているときにも、自律神経が乱れて適性に唾液が分泌されないことからネバつくことがあります。サラサラの唾液(漿液性唾液)は口の中の菌を流してくれる役割があるので、ストレスが続く状態は歯周病を引き起こす要因にもなります。
⑨歯ぎしりをする癖がある
歯ぎしりは歯周組織全体に負担をかける行為です。
寝ている間の歯ぎしりは自分では気づかないので、家族や友人に聞いてみるといいでしょう。
⑩口で呼吸することが多い
口呼吸は口内を乾燥させ唾液の分泌を減少させます。
先述したように唾液による菌や汚れを押し流す働きは歯周病を防ぎます。
すぐに喉や口内が渇く人は、口呼吸が中心になっていないか確認しましょう。
歯周病の予防法3つはこれ!
ブラッシング
ブラッシングは何よりの予防法です。毎日欠かさず続けることはもちろんですが、正しい方法で行うことが大切です。
例えば、適当に磨いているが朝・昼・晩の3回もしくはそれ以上磨いている人とすごく丁寧に時間をかけているが朝と晩の2回だけという人とでは、後者がより予防に効果的なブラッシングができている人です。
適当に磨いて回数だけこなすブラッシングには、むしろ口内環境を悪化させ歯周病を促進させるリスクが潜んでいます。
- 歯の表面に傷がつき菌が入りやすい状態になる
- 象牙質が露出し知覚過敏が起こる
- 歯肉が傷つき炎症を起こす
ポイントは柔らかめの歯ブラシで時間をかけて丁寧に磨くことです。
食後のタイミングについても様々な意見がありますが、基本的には30分以内に磨けば時間による効果の差はありません。
電動歯ブラシとフロス
電動歯ブラシは通常の歯ブラシでは除去しにくいプラークを落とせる効果が高いです。
音波振動と回転により細かく磨くことができるので、つい力を入れて大雑把に磨いてしまう人にはお勧めです。
またデンタルフロスや歯間ブラシも効果的です。
歯と歯のすき間や歯と歯肉のすき間はプラークが溜まりやすく、歯周病を引き起こす温床となる部分です。確認しにくい奥歯への使用やデンタルフロス初心者の方にはホルダータイプ(柄付きのフロス)をお勧めします。
日ごろの丁寧なブラッシングと並行して行うことで相乗的に予防効果を高めます。
生活習慣を改善
歯周病が生活習慣病の1つだと言われているのは、糖尿病・肥満症・動脈硬化といった生活習慣病と密接な相関関係にあるためです。
その根拠について糖尿病を例に挙げて説明します。
厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」には次のように書かれています。
糖尿病は喫煙と並んで歯周病の二大危険因子であり、一方歯周病は三大合併症といわれる腎症・網膜症・神経症に次いで第6番目の糖尿病合併症でもあり、両者は密接な相互関係にあります。しかし慢性炎症としての歯周炎をコントロールすることで、糖尿病のコントロール状態が改善する可能性が示唆されています。”
糖尿病は血管の収縮・代謝の異常・傷の回復機能(創傷治癒)の低下などを招くことから、歯周病の進行を促進させます。さらに歯周病には体の血糖値を上昇させる働きがあるため、糖尿病のコントロールを困難にします。
糖尿病と歯周病には、このような負の連鎖があるのです。
ただ引用の末文にもあるようにどちらかを改善すれば両方が良くなる可能性があるということです。
代謝を向上させる適度な運動・ビタミンが豊富な緑黄色野菜をメインにした食事・血行促進のためのストレス解消、といった習慣をつけることが歯周病、ひいては様々な生活習慣病の予防と改善につながるのです。
ワンポイントアドバイス
歯科医院で検診を受けることは非常に効果的な歯周病対策です。
歯周病の原因となるプラークが溜まっていないか、プラークが歯石に変化していないか、自分の口内環境に合ったセルフケアの方法はどんなものか、といった危険性やアドバイスを専門的な知識を持った歯科医師が直接教えてくれます。
ただどんなに優秀な歯科医院であっても、歯周炎の末期まで進んだ歯周病を元の健康な歯に戻すことは非常に難しいです。
ここでのセルフチェックで思い当たる項目があった人は、手遅れになる前に早めの検診をお勧めします。